Imaya

過去と今を繋ぐストーリー  

 

 私の祖父は、富山県の古い町家で小さな骨董屋を営んでいました。祖父の家に行くと、謎の古道具や箱が山積みになっていて、香ばしいような独特のにおいがし、チクタクゴンゴンという古時計の音が聞こえました。

「来たがけ」(よくきたね)と迎えてくれた祖父は、鉄瓶を囲炉裏にかけ、銀を磨き、欠けた食器を繕ったり、壊れた道具を修理したりと、いつもせわしなく動いていたのを覚えています。

祖父が亡くなった数年後、今度は母が古いものを扱ったお店を始めました。

一方私はというと、全くといっていいほど古いものには興味がなく、学生時代は新しい物を次から次へと買っては捨てという生活。

社会人になれば、俗に言う「社会不適合者」で、仕事や住居を転々とする流浪物のような暮らしをしていました。(そこは今も変わりませんが…)

ただそうするうちに、必然的に周りの物は少なくなっていき、自分と関係が深いもの、歴史やストーリーのあるものだけが手元に残り、物との向き合い方が少しずつ変わってきました。

2016年、30歳を目前に一念発起し、学生時代以来再びデンマークへと渡りました。1年間「やりたくないことはやらない!」ことだけ決め、じっくり自分に向き合いながらまったりと北欧のゆるやかな時間を楽しむ中、心がワクワクして必ず足を止める場所がありました。

それは、

夏には各地の広場や通りで毎週のように開かれるフリーマーケット。

冬は街中のひとつ入った静かな通りの古びたアンティークショップやセカンドハンドのお店。

足を踏み込むと、たくさんの古いものたちがいっせいに語りかけてきて、宝探しのような高揚感と共に、大好きだった祖父に会えたような温かい気持ちが蘇ってきました。

 

冬が長い北欧の人は、家の中の生活をいかに快適にするかに命をかけており、シンプルだけど洗練されたデザインに、修理をしながら何代も使う事ができる良質なものがたくさんありました。そしてそれを、家族やフリーマーケットなどで次の人へバトンを託します。そのような物を長く大切に扱う精神は、祖父や母の姿や、かつての日本の文化にも通ずるものがあり、親近感を覚えると共にどんどん魅了されていきました。

 

作り手の意思や、何代かに渡り大切に使った人々の生活跡、修理をして再度送り出す人…

1つひとつが独自のストーリーを持ち、多くの人の愛情や歴史が刻まれていると思うと、愛着が湧き、自分だけの特別になります。

そんな素敵なモノたちを大量に日本に持ち帰って家族に驚かれたのが、Imayaの始まりです。

様々な人と時間を繋いできた物たちが、時空を超えて、持ち主の”今”を照らしてくれますように。

時を超え、大切にされてきたアンティーク雑貨と、新たな持ち主を繋ぐ、良き仲人になれれば幸いです。

 

 

 

shop owner : Aya

大阪大学外国語学部デンマーク語学科、大阪大学大学院人間科学研究科を卒業後出版社や児童館など、挫折と挑戦を繰り返しながら職を転々とし、30歳を目前に再度デンマークへ。

2016年デンマーク在住時に、かつて祖父と母が行っていたアンティーク業に目覚め、個人輸入を始めました。年に数回北欧と日本を行き来し、自分の目で選んだものを直接買い付け販売しています。

素敵なアンティーク・ヴィンテージ品と共に、古いものを大切に使う暮らし、北欧の文化や社会の魅力もお伝えしていきたいと思います。