大晦日・デンマーク女王のスピーチ

大晦日・デンマーク女王のスピーチ

久しぶりに過ごした北陸の冬。今年は雪が多く、もしかしたら北欧よりも光の摂取が少なかったかもしれません。庭の木は倒れ、除雪車が詰んだ雪山は数メートルに。

雪山を見ると、学校の帰りに登っては友達と落とし合いをしたり、スキージャンプの真似をしたりとぐちゃぐちゃになって遊んでいたことを思い出します。(今でも雪山を見ると血が騒ぐのですが、そんなことしている子どもは一人もみかけず、みんなお家にこもっているのかな)

 

さて、つい数日前にデンマークの女王の夫のヘンリック殿下が83歳で亡くなったというニュースを見ました。王室が大人気のデンマークですので、今週はきっとこの話でもちきりだと思います。

デンマークのマルグレーテ女王は「国民に近い女王」と言われ、いろんなところに出かけて国民と接したり、タバコを吸ったり、足を組んだり、ショッピングしたり、アートやデザインに長けたりと、飾らない気さくな女王様だそうでみんな大好き。

大晦日の夕方には毎年スピーチをするのですが、その時間は子どもも大人もテレビの前に座り、じっと女王の言葉に耳を傾けます。
私も一昨年の大晦日には友人家族とスピーチを見ていましたが、国民にとって女王は別格の見上げるような存在というより、尊敬する自慢のリーダーなんだなという印象を受けました。

2017年大晦日のスピーチが出ていたので、冒頭だけご紹介したいと思います。

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年々、時間が過ぎるのが早くなるように思います。
子どもの頃は、クリスマスイブの朝目が覚めてから、その夜皆でクリスマスツリーを囲むまでの時間が永遠のように感じました。クリスマスから大晦日にかけての日々は、とてもせわしなく進みますが、大晦日にコペンハーゲン市庁舎のベルに耳を澄まし、町中に花火が咲き乱れるまでのその時間はまたゆっくりと進みました。


1年のこのひとときを特別なものにするものはおそらく、「期待できるうれしさ」でしょう。
この時間には、皆で集まれるうれしさや、新たな希望と力を新しい年に抱くうれしさがあります。
とは言え、この日まで厳しい時もあったことと思います。私たち皆にとって、起こる全てのことが喜びに帰するわけではありませんから。

人々は皆、違います。デンマークは、個人の能力、 才能、仕事においてその違いを必要とします。


ある人は計算が得意でしょうし、テクノロジーについてとても詳しい人もいます。
顧客を引きつけビジネスに長けた人がいれば、教えることが得意な人、子どもやお年寄りや病気の人をケアすることができる人もいます。本を読み更けて世界を広げることを好む人、自分の手であっと驚くようなものをつくりあげる人もいます。


どの人の方が他より優れているとかすごいということはなく、私たち皆にとってその全てが必要です。

私たちは一人として例外なく、自分のできることをして生きています。
経済危機も、皆連携をして振り払いました。国のあちこちで、活気あふれる活動が行われました。
経済成長の時代には、皆の力が必要ですし、実際は国外の人々も必要です。
歴史を通して、デンマークでは優秀な技術や頭脳を国外から借りてきており、たくさんの人々が働きにきていました。彼らを必要としていたのです。そして今も変わらず、必要としています。例えば、農業や、ホテルやレストランで従事する人かもしれませんし、特別な知識を持った専門家もそうです。

それは単に人手不足だからということではなく、デンマークがこれまで培ってきたあらゆる分野での活躍を今後も維持するためにも、国外からのアイディアやインスピレーションが必要だからです。ちょうど私たちがこれまで世界をインスパイアしてきたように。

デンマークが得た高い評価は、伝統と、あらゆる時代の人々がもたらした変革によるものです。これまでもずっとそうしてきたように、デンマーク人として決して揺らぐことない、自分たちらしさを貫いていきましょう。(つづく)
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スピーチでは、あまり政治的なことは言ってはいけないようですが、デンマークでも移民排斥などの保守的な思想が増えているのもあり、多様性を受け入れる大切さを国民に説いていました。

一昨年のスピーチでも最初に、世界のテロを受けて恐怖に屈しないように、そして隣人を排斥せずに受け入れる努力をするようにというようなことを言っていたと思います。


上からではなく国民に寄り添って話りかけるような優しいスピーチ。今年で78歳だそうですが、毎年スピーチを楽しみにしている国民の期待に末長く応えてほしいものです。

女王のスピーチは日本の紅白歌合戦や行く年くる年のようなもの。スピーチを聞いたあとは、皆で食事をし、大人はシャンパンを片手に議論を始め、子どもたちは花火の準備をしにいっていました。

0:00に皆で椅子の上など高いところから飛び降り、家庭用とは思えない大きな花火を近所中が打ち上げていました。

 デンマーク人に日本の大晦日のことを聞かれて、「大掃除して、雪がしんしん降る中、除夜の鐘を聞いて新年を迎えるかな」と話すと、「わはは!デンマークでは花火をバンバン打ち上げてとっても騒がしいから、全然違うわね!」と笑っていました。

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