北欧食器秘話②:リュンビューポーセリン

北欧食器秘話②:リュンビューポーセリン

前回、デンマークのガラスブランド「ホルムガード」をご紹介しましたが、ホルムガードの製品がホルムガードという町で作られていたように、北欧のブランドの多くは、よくその地域にちなんで名付けられています。

日本の有田焼や瀬戸焼みたいなものでしょうか。せっかくですので、そのブランドと共に、デンマークを旅するように、その地域も合わせて紹介していきたいと思います。

今回ご紹介するのはリュンビューポーセリン(Lyngby Porcelæn)です。

クラシックなロイヤルコペンハーゲンやB&Gとはまた違い、シンプルモダンなデンマークデザインが特徴的です。

ブランド名に使われているリュンビューは、首都コペンハーゲンの北にあります。

 

住みたい街ランキング上位のリュンビュー市(Kgs. Lyngby)

デンマークで最も人気の街は、もちろん首都のコペンハーゲンです。日本の都市と比べてゆったりこじんまりとして緑も多いコペンハーゲンですが、中心部は古いアパートが多く、駐車スペースも不足しているので、家族でゆったり住むにはちょっと…という人もいます。

「一軒家に住みたいけど、仕事はコペンハーゲン」という人に人気なのが、コペンハーゲンの北部の地域です。コンゲンス・リュンビュー市もその一つ。

コペンハーゲンまで電車やバスで20分〜30分ほどで行くことができ、湖や森など自然も豊かです。コペンハーゲン北の海岸沿いや、北部の地域は人気の街です。

リュンビュー市街には12世紀にさかのぼる歴史あるリュンビュー協会や、

小さなショッピングストリート

参照:Lyngby kommune

また、駅前には近代的なショッピングモールや百貨店もあり、コペンハーゲン市内よりゆったりと暮らすことができる街です。実は私も、2016年の1年間このリュンビューに住んでいました。

北部には1000ヘクタールもある大きな自然公園があり、Dyrehaven(鹿の公園)という名前の通り2000頭の野生の鹿が生息しています。

木陰で休む鹿たち

元々は王室のハンティング拠点だったそう。

高台からは海が見え、市民が散歩したりピクニックしたりしています。

 

わずか33年で閉業するも、40年後に復活した異例のブランド

そんな、今では人気の郊外リュンビューに80年前に設立されたのが、リュンビューポーセリンです。

元々はデンマーク第二の都市のオーフスのPorcælensfabrikken Denmark という会社でした。ヨーロッパ諸国の安価な庶民向けの食器を販売する会社ですが、1930年代の大恐慌を受けて、デンマーク国内で製品を作ることになります。

そして1936年にリュンビューにあった古い製糖工場に新たに作られたのが、リュンビューポーセリンでした。

参照:Lyngby porcælain

リュンビューポーセリンはその時代に主流であった装飾的な製品と対照的に、機能性や合理性に重きを置くバウハウス運動の影響を受けたモダンな製品を発表していきました。

リュンビューポーセリンの代表的な花瓶リュンビューベースもこの頃に生まれます。

ピーク時は、デンマークの磁器の3分の1を占める生産量を誇っていましたが、設立からわずか33年後の1969年に閉鎖してしまいました。

工場は閉鎖してしまいましたが、リュンビューポーセリンの製品は、デンマークデザイン・北欧デザインの象徴として、その後も影響力を持ち続けます。

そして、華やかで安価なものを求める大量生産・大量消費の時代が下火になり、質や機能性、持続性が見直されるようになった近年、42年の時を経て、2012年にリュンビューポーセリンとして復活しました。

Lyngby porcælain

現在の工場は、リュンビューではなくドイツにあるそうですが、リュンビューベースは現在デンマークでも日本でも人気を誇っています。

先月買い付けで見つけたのは、短い33年の間にリュンビューで作られた、初代リュンビューポーセリンのものです。

波のような模様のスープカップ&ソーサー

同じスープカップ&ソーサーでtangent(鍵穴)というシリーズです。

リュンビューポーセリンらしく、無駄のないシンプルなデザインですが、両耳がついていて可愛らしく、ソーサーもついて存在感があります。

ご家庭でも使いやすいシンプルさと可愛らしさを兼ね備えたリュンビューポーセリンのお品でした!

ブログに戻る