先日、念願のwebショップがオープンしました!
嬉しくて、今年89歳になる祖母が遊びに来た時に「これが今の骨董屋やよ!」と自慢すると、祖父と小さな商店をしていた祖母は (今も一応1人で店を開けているのですが)、「時代は変わったもんやねぇ~」と目を丸くしていました。
インターネットでたくさんの人に見てもらえるけど、これこれこういうデメリットもあるよと言うと、「なんでも一利一害やねぇ~」としみじみ。
そんな祖母が最近私に会うと必ず「あんた、商売もいいけどいつ結婚するがいね?」と言ってきます。
「はいはーい」と適当に流す私はもうそんなに若くないのですが、実際あまり焦っておらず、自分なりの形を見つければいいと思っています。それもこれも、北欧でいろんな家族の形を見てきたからだと思います。
- 2組に1組が離婚するデンマークの夫婦
最近は日本でも事実婚や週末婚など、家族の新しい形が話題になっていますが、北欧の人たちと会話していてよく驚くのは、そんな、モダンファミリーのあり方です。離婚率が約50%、2組に1組が離婚しているということ。
ここまで離婚が一般的になると、当然デンマーク人も離婚をごくごく普通のことだと思っているので、話す方も聞く方も、ドギマギする雰囲気にはなりません。ただ、それぞれが別の道を歩んだだけのこと。
普段の暮らしに、日本だったらちょっとびっくりするようなシチュエーションが出てきます。
- 結婚していないパパとママ
離婚率50%と聞いて、正直「それだけ?」と感じます。体感ではもっと別れている気がする…それは、そもそも事実婚が多く結婚していないカップルが多いからだとわかりました。例えば、私が学生の頃ホームステイしたデンマークの家の同い年くらいの女の子が、「うちのママとパパは結婚してないの!」とサラッと言っていました。要は事実婚だったという訳なのですが、そのパパとママはとっても仲良しで、「夫婦=結婚しているもの」だと思い込んでいた当時の私は驚きを隠せなかったのを覚えています。
- 隔週で両親の家を行き来する子ども”delebørn”
6才の女の子のベビーシッターのバイトをしていた時、その子の両親は離婚しており、女の子は1週間ずつ、パパの家とママの家を交代で過ごしていました。
例えばお母さんの家からお父さんの家に交代する日は、朝お母さんと学校に登校し「また来週ね」と別れを告げます。夕方迎えにくるのはパパなので、両親は最悪離婚して仲が悪くても顔を合わせなくてすむのです。子どももどちらかの親に会えないということはありません。
それをデンマーク人の友人に言うと、「あぁ、ディーレボーン(delebørn)ね!」と名前もついており、親権は半々が普通のデンマーク。離婚後どちらかに引き取られるのではなく、両親の家を行ったり来たりする子どもは珍しくないのだそうです。
- ごちゃまぜファミリーのクリスマス
離婚後、再婚などするともっとややこしくなっていくかと思いきや、それはそれでビッグファミリーとして成り立っているように見えました。
以前友人のクリスマスパーティーについていくと、家には20人くらいの人がいました。誰が誰か紹介する余裕もなく始まったので、隣の人に挨拶すると、その女性は私の友人の"姉の旦那さんの前の奥さんの娘"でした。血が繋がっている人もいない人もいっしょに揃って楽しそうにクリスマスを過ごしているのは、それはそれで家族が増えて楽しそうに見えました。
ただ、やっぱり綺麗なことだけではなく、嫉妬やひがみもあるんだとか。
- 元旦那の奥さんともクリスマス
ある友人は60代後半の女性で、2回離婚をして現在は1人で住んでいます。でも、クリスマスはいつも前の旦那さんの家で過ごすそう!その元旦那さんは再婚しているので、「今の奥さん嫉妬しないの?」と聞くと、「するわよ」という回答。やっぱり今の奥さんは前の奥さんである友人に嫉妬するそうです。
でもそうすると旦那さんは、今の奥さんに「嫉妬しないで。妹みたいなもんなんだから」と友人を庇うそうです。そんな、日本だったらドロドロになりそうなシチュエーションも、コメディみたいに笑って聞けるのが不思議なところ。
- 人類皆家族
もっと進んだモダンファミリーもいました。一人娘のいる友人と知り合ったばかりの頃、その友人の家に招かれて行くと、その娘ちゃんに加え、ティーンの女の子が2人、そして娘ちゃんと同じくらいの小さな男の子が家にいました。ティーンの子たちだけだいぶ歳が離れていたので、おそらく相手の連れ子だとわかりました。友人はパートナーと結婚しておらず、友人のパートナーは以前も結婚していなかったのでティーンの子たちは、元カノの子どもたちということになります。その子たちも、1週間ごとに交互に父親と母親の家に滞在するので、友人はいつも、自分の娘と同じように愛情を注いでいます。友人の両親も、自分の孫としてお誕生日を祝ったり、食事をしたりしていました。
もう一人の娘ちゃんと同じ年くらいの男の子は、友人のパートナーの元カノと、また別のパートナーの間の子どもだそうです。ティーンの娘ちゃんたちとはお母さんが一緒の異父兄弟ということになりますが、友人カップルとその娘ちゃんにとっては全く血の繋がりがないことになります。
それでも、その子も家族として一緒に過ごし、旅行に行く時もいつも一緒。友人の娘ちゃんは最初にあった頃、「私はね、お姉ちゃん2人とお兄ちゃん1人いるの!」と自慢していました。
血の繋がりがあってもなくても、状況が違っても、子どもたちはたくさんの大人たちに愛情を注がれながら、すくすく育っているのを感じました。
- シングルマザーの決意
あるスウェーデンのお友達のお家を初めて訪ねた時のこと。可愛い3歳ほどの小さな男の子が駆け寄ってきました。父親のいる様子はなく「可愛い子ですね!」というと、彼女は出会ってまだ数分の私にこう言いました。
「この子ね、試験管からきたのよ!」
「試験管から来た」というパワーワードに、さすがに私もびっくり。聞くと、父親はおらず、体外受精で自分のお腹で産んだとのこと。後日に改めてその話題になった時、彼女は言いました。
「付き合っている人もいたんだけど、私は私の子どもが欲しかったの。自分で子どもとして育てることが、自分のエンパワメント(自信や力を与える)になると思ったの」
女性として、人として強く生きるために、あえてシングルマザーを選ぶというパワフルな決断。かっこいいなぁー!と感銘を受けました。
- 社会のバックアップと、「いろいろあって当たり前」という余裕
とは言え北欧でも、全てが理想通りに行くわけではなく、決して綺麗なことだけではないそうです。いいなと思うのは、「生きてたらいろいろあるよね!」と、どんな状況も選択も、いろいろあっていいんだと思える寛容さ。見方によってはドロドロや悲劇になりそうなことが、なぜか喜劇に見えるような、そのうち笑って暮らせるような、そんな余裕や安心感が感じられます。
その余裕は、家具や食器、インテリアやデザインなど今の北欧のいたるところで見られる物や人や暮らしの根幹となっているように思います。
その寛容さは、どこからくるのでしょう?
実はデンマークでも、40年ほど前までは、女は家庭に入り、子どもは学校で暗記テストをするという保守的な考えが浸透していたようです。
とすると、現在の余裕の大半は、今の社会システムからくることが大きいのだと思います。
離婚の際、日本では子どもの養育費などが問題になることが多いようですが、デンマークやスウェーデンでは教育や医療費などは全て無料で、大学へ進学する子には国から月々9万円の生活費が支給されます。子どもの成長や進学に関する大部分を社会が担ってくれるため、家族の負担になりません。
また、育児支援や労働環境が整っていて、女性自立しやすく、男性も育休を取得し、家事育児に参加します。男女共に、子育てをしながら働きやすい環境が整っているので、必要以上に依存し合う必要がないことも大きいと思います。
「子どもは社会が皆で育てるもの」
両親が子どもの荷を、子どもが両親の荷を、夫婦がお互いを背負う必要がないので、常に自由な選択肢を持ちながら、自分なりの形を模索していく。
北欧がしあわせだと言われる所以は、そんな選択肢の寛容さや自由さにあるのかもしれません。