250年の歴史あるロイヤルコペンハーゲン。
デンマークに住んでいる時から、多くのロイヤルコペンハーゲンに接してきましたが、その質の良さ・格調高さは、見れば見るほど、たくさん接するほど、改めて感じます。
お客様からよく製品の質や年代についてお問い合わせを受けるので、どこかで気になるロイヤルコペンハーゲンに出会ったときに、とりあえず基本となる見分け方をご紹介したいと思います。
1.偽物か本物か
たまに、お客様からお問い合わせがあります。例えば、「バックプリントが他のものと違う」や、「自分が持っているものの薄さと違う」という相違点からもしかして偽物ではないかと不安に思う方が多いようです。
結論から言うと、「デンマークにロイヤルコペンハーゲンの偽物はほぼない」ということです。現地のアンティークショップのオーナーさん達にも聞きましたが、「デンマークのような小さな国で、ロイヤルコペンハーゲンのようなクオリティーの製品を作れるなら別のブランドを作るし、そのような偽物が存在したことが発覚したら国内でもセンセーショナルな事件」と笑っていたのを覚えています。
(鑑定中のコペンハーゲンのアンティークショップのオーナー)
ただし、ある年代のものが希少なためプレミア価格がついているイヤープレートなどは、近年になってデンマーク以外の国で偽物が作られていることがあり、注意が必要です。
ロイヤルコペンハーゲンの製品は、機械ではなくて手仕事で作られているものですので、バックスタンプや色合い、製品の薄さやペイントはその時代や職人によって千差万別です。なので「こうであれば本物」という基準はないのですが、バックプリントによってその製品について詳しく確認することはできますので、ご紹介していきます。
2.A級品かB級品(訳あり)か
ロイヤルコペンハーゲンの製品は製造時に、1級品か2級品かに分けられます。1級品は審査を通り問題なしのもの、2級品は製造過程で色合いやペイントなどになんらかの訳ありが見つかったアウトレット品ということになります(使用には問題ない程度)。
製造時になんらかの理由によって訳ありと判定されたものは、裏のバックプリントの王冠の下の三本の波線に小さな傷がつけられています。
そういうものはよく見ると、表面にわずかな凹みがあったり、ペイントがずれていたり、黒点があったりします。
ただ、クオリティは1級品とほとんど変わらず、よく見ないとわからないようなものばかりです。B品であっても手描きのペイントがとても素敵だったり、少し薄く出た色合いがちょうど良かったりと、縁を感じたら、そのような品評だけにこだわらず自分だけのお気に入りとして購入されてはいかがかと思います。
3.デンマーク製かタイ製か
現在のロイヤルコペンハーゲンはタイで製造されています。それがいいか悪いかは別として、「ロイヤルコペンハーゲンはデンマークで作られたものが欲しい!」という方は、タイに工場が移された2004年より以前のものを探せば良いのですが、こちらは単純で、裏のバックプリントの波線の上に「DANMARK」と入っていればデンマークで作られたものです。
ちなみにこちらは最近のもの。DANMARKの記述はないですね。
4.年代ものか新しいものか
その製品がいつの時代に作られたかというのもバックプリントを見て判断することができます。1925年以降のものであれば、王冠の周りにあるROYAL COPENHAGEN DANMARKのどの文字の上下に小さなアンダーバーがあるかで何年に製造されたかがわかります。
小さなバー(-)がROYAL COPENHAGENの上にある場合は1935-1949年のもの
バー(-)がROYAL DENMARK COPENHAGENの下にある場合は1950-1984年のもの
バー(-)が二つあり、ROYALの上にある場合は1985年-2004年のものです。
また、少し難しくなりますが、100年ほど経っている古いものは、デンマークで製造されていてもDENMARKという記述がありません。
タイ製のものは①DENMARKという記述がなく、②バー(-)が二つあり、ROYALの上にあります。
100年以上の古いものは、①DENMARKという記述がなく、②ROYAL COPENHAGENの文字にバーがない・あるいはあってもバー(-)が1つしかないはずです。
こちらのティーカップは、バックスタンプにDENMARKという記述がなく、またROYAL COPENHAGENの文字にバーがないことから1920-1930年代の古いものだということがわかります。(下に出てきますが、もっと古いものは王冠のマーク自体が違うので、それはわかりやすいかと思います)
古ければ良いということではありませんが、私はやはり古いものを見つけるとテンションがあがります。古いということは、たくさんの時代や人に受け継がれてきたというロマンがありますし、磁器なのでその間割れずに生き抜いてきたという生命力の強さ(?)も魅力です。
また、やはり昔は職人の技術が高く、古いものにはクオリティーも高いものが多いです。
例えばですが、現在でも製造されているブルーフルーテッドのフルレース。
うちで多く取り扱っている小さな豆皿ですが、左が1894年-1900年につくられたのもので、右が1990年代のものです。
左は100年以上前のものですので、バックプリントの王冠のマークも違います。
左はとても薄く、職人がひとつひとつ切ってつくるレース部分もとても繊細につくられているのがわかります。
全てにこのような違いが現れるわけではないですし、今でも腕の良い職人はいるとは思いますが、見て触る度に、やはり昔の人は仕事が丁寧で、機械などが発達していなかった分、手先が器用だったのかなと感じることが多いです。
また、土が違うのかわかりませんが、白磁の部分も、今のものより昔のデンマーク製の方が、「締まっている」というか、凛としています。これはお客さまにもよく言われることです。
5.自分のタイプかどうか
バックプリントとはあまり関係ありませんが、自分のタイプかどうかはとても大事だと思います。特にロイヤルコペンハーゲンの製品は、クラフトマンシップを大切にしてきた会社ですので、同じシリーズで同じ形でも、ペインターや職人によって表情が様々です。
お客さんがその中から自分の好きな絵柄を選んでいかれるのですが、本当に人によって様々で、濃く元気なものが好みの方がいれば、淡く繊細な雰囲気を好まれる方もいます。数十年前、あるいは100年以上前にせっせとペイントを施していたペインターの中にきっと自分と波長の合う人がいるはずです。
ペインターのサインもバックプリントに描いてありますので、もしかしたら同じペインターを選ぶこともあるかもしれません。よく、相性がいいなと思って2枚セットにしたら、年代もペインターも同じという「双子ちゃん」に遭遇することがあります。そんな時は長い間ずっと離れず、海を渡り一緒に日本に来たのだなと、嬉しくなります。
知識も役に立ちますが、アンティークは特に一期一会の出会いなので、最後は自分の直感を信じて、自分の好きな相方を選ぶ気持ちで選んでいただくと、日々が少し豊かになる、暮らしのパートナーとなるかと思います。